御詠歌  初秋に 風吹き結ぶ 萩の堂 宿かりの夜の 夢ぞ覚めける

札所五番から十番までの6ヶ寺は秩父郡横瀬町にあり、横瀬川の両岸に点在する。
卜雲寺は高台にあり、見晴らしがよく武甲山を望むことができる。
寺名は、寺の開基とされる嶋田与左衛門の法号が卜雲源心庵主であったことに由来する。
本尊は、秩父札所開創時に武甲山山頂の蔵王権現から、荻野堂に移されたものであることから、
この寺は別名荻野堂とも言われ、御詠歌にも詠われている。

萩の堂縁起絵巻

萩野堂に伝えられた「萩野堂本尊並開基之縁起」天明元年(1781年)作によると、
行基菩薩作といわれる本尊の聖観音は武甲山頂の蔵王権現社内に安置されていた。
村人が「とが池」の大蛇を退散させるため祈願したところ、
その霊験があったので「とが池」を埋めて草堂を建て荻野堂と称し、
ここに武甲山の尊像を安置したと記されている。

山姥の歯

卜雲寺の寺宝の山姥の歯は、
行基菩薩によって捕らえられた武甲山の山姥が解き放たれた時に
神仏に背かぬ、と誓いを立て歯を三本抜いて差し出したので、
行基はそれに本尊を刻んで安置したという言い伝えが残っている。