御詠歌  みやま路を かきわけ尋ね 行きみれば 鷲の岩やに ひびく滝つ瀬

志賀坂峠に通じる国道299号線を進むと特異な山容の両神山が近づいてくる。
栗尾のバス停から右に入り、道なりに進むと徒歩約45分で札所三十一番観音院の山門に着く。
日本一の大きさを誇る石造りの仁王様が力強く大地を踏みしめる山門をくぐると、
約三百段の石段が目の前に迫る。
境内には「爪彫りの磨崖仏」といわれる千躰仏があり、
また、奥の院へ向かう途中の岩窟にも石仏があり、全山で十万八千体の石仏があるといわれている。
山内には胎内くぐり、鎖場、展望台などの見所があり、
秩父札所寺院の中では、やや体力が必要とされる。

本尊の奇瑞

観音堂に安置されている本尊聖観世音は行基菩薩の作と伝えられるが、
将門の乱で所在を失ってしまった。
その後、畠山重忠がこの地に狩りに来たとき、
家臣に命じて遠くの梢の鷲の巣に矢を射らせた。
命中しているにもかかわらず矢がはねかえったことを不思議に思い、
巣をおろしてみたところ、巣の中から所在不明だった観音像があらわれたという。
奇縁に感じた重忠が堂宇を建立して、この聖観音を安置したことがこの寺の始まりと伝えられている。

爪彫りの磨崖仏

聖浄の滝の左手の岩場には、弘法大師が一夜にして彫ったと伝えられている千躰の磨崖仏がある。
正式には「鷲窟磨崖仏」といい、埼玉県指定文化財である。
奥の院に向かう岩窟にも石仏があり、山全体では十万八千体の仏があるといわれている。